前立腺の病気

目次

前立腺肥大症

  • 前立腺は年と共に大きくなり、症状も出てきます
  • 前立腺肥大症はメタボリックシンドロームと相関関係があります
  • 夜間頻尿(2回以上)は長生きできない??

男性は年をとってくると、若い頃に比べて尿の出が悪くなるものです。その原因の中で一番多いのが、前立腺肥大症です。前立腺が肥大して大きくなると、内側を走る尿道を圧迫したり、前立腺の筋肉が過剰に収縮して尿道が圧迫されたりするために、尿が出にくくなるなどの排尿障害が現れるようになります。なかなか人に相談できない症状かもしれませんが、治療により負担が緩和されることも多いです。
症状が現れたら、自己判断せずに、専門医に相談しましょう。

前立腺肥大症(BPH)
前立腺肥大症患者数の推移
メタボリックシンドロームと前立腺肥大症の関連

メタボリックシンドロームの要因と前立腺肥大の有病率は正の相関がありBPHもメタボリックシンドロームの一症状といっても過言ではありません

夜間頻尿と生存率

夜間頻尿は高血圧などの要因もありますが、前立腺肥大症で多く見られる症状であります。
本邦における報告では夜間頻尿1回以下と2回以上で有意差をもって生存率に違いがでています。
1年で約3%の違い

前立腺肥大症の診断と検査

排尿障害の原因となる疾患があるかどうかなど(病歴)を聞き取り、以下のような検査を組み合わせて総合的に診断します。

IPSS(国際前立腺症状スコア)

自覚症状の程度を点数化する採点表です。10点以上なら専門医への受診をお勧めします。あなたの前立腺肥大の程度はどのくらいか試してみてください。
IPSS(国際前立腺症状スコア)

尿流量測定(ウロフローメトリー)

排尿障害について客観的な評価が可能な装置です。
自分は問題ないとおもっていても、実は排尿時間がかなりかかっていた、勢いが弱かったなど客観的に評価が可能です。診断、治療の目安になる専門機器を導入しています。

尿流量測定
超音波検査

前立腺の大きさ・形・内容を観察します。また残尿(膀胱に残っている尿)量の計測もできます。その他の病気(がんや結石)の有無を多角的に診断します。

前立腺肥大症の治療

前立腺肥大症の治療は、薬物療法、手術が根幹となる治療となります。双方ともめまぐるしく治療内容が進歩しており、より治療効果がつづく薬、低侵襲手術が発達してきております。

薬物療法では

  • α1ブロッカー:タムスロシン、ナフトピジル、シロドシン
  • PDE5阻害薬:タダラフィル
  • 5α還元酵素阻害薬:デュタステリド

この3剤は第一選択として投与される薬剤ですが、効果の違い、特徴も異なりますので、よく説明を受けたうえで継続治療された方が良いと思います。
手術治療においてはレーザー治療が主流になってきております。治療成績、手術合併症、入院日数とも従来の方法からは改善しています。当院からも専門施設への紹介できる連携を持っておりますのでご相談してください。

前立腺がん

  • 50歳を過ぎたらPSA検査をしましょう
  • 前立腺がんは、男性のがんで一番多い
  • 検診で見つかる前立腺がんは早期がんが多い
  • 転移がなければ長生きできる
  • 手術支援ロボット・ダヴィンチも標準治療に

前立腺がんは、年々罹患数が増えており、2015年には前立腺がんは男性のがん罹患数で第1位になっています。
高齢になるに従って増える傾向にはありますが、50-59歳でも男性第4位と非常に多くなっています。
前立腺がんの5年生存率をみると、進行がんでは50%であるのに対し、限局、局所進行がんであれば95%以上でありその差は歴然です。血液検査のPSAが普及してからは、進行がんで見つかる前立腺がんの割合は劇的に減りました。まだまだ欧米と比べると日本の前立腺がん検診の普及率は低い状態ですので、一度は検査をお勧めしています。

わが国における前立腺がん罹患数の将来予測
前立腺検診のすすめ
前立腺がん生存率
前立腺がんの症状

前立腺がんに特有の症状というのはありません。前立腺肥大症と共存することもあります。この場合は排尿困難や頻尿など、下部尿路症状などがみられます。

前立腺がん検査の流れ
PSA(前立腺特異抗原)

PSAは、体の中にもともと存在する成分で、健康な方でも前立腺でつくられています。しかし、前立腺がんがあると、血液中のPSA量が急激に増加するので、前立腺がんの早期発見にあたって、とても重要な検査です。血液検査だけで測定できるため、前立腺がんの集団検診にも使用されており、早期発見に役立ちます。

4ng/ml以下 陰性: 定期的にPSA検査をして経過を見守ります。
4.1ng/ml〜10ng/ml グレーゾーン:正常値より若干高めの値で、がんの人と前立腺肥大症など、前立腺の他の病気の人が含まれている可能性があります。
10.1ng/ml以上 陽性:がんがあることが疑われます。高い場合は数百ng/mlという数値が出ることもあります。
直腸診

前立腺の大きさ・硬さ、表面のなめらかさを直接指で触って確認します。

超音波検査

前立腺の大きさ・形・内容を観察します。

MRI

前立腺内部の質的診断が可能で、特に悪性度の高いがんの検出に有用です。

前立腺生検

超音波を用いて前立腺組織の一部を採取し、がん細胞の有無を調べます。がんであるか否かの確定診断ができます。

検査と診断の流れ
前立腺がんの治療

前立腺がんの治療法は進行の程度によってそれぞれ異なりますが、患者様の状態や年齢などを考慮し、最適な治療法を選択します。

監視療法

悪性度の低いがんであれば進行も遅く、即時治療介入は行いません。
定期的なPSA検査、MRI、前立腺再生検で経過観察を行います。
的確な経過観察のもと、必要な時期の治療を提案します。

手術

前立腺がんでロボット手術(ダビンチ)が行われるようになって10年がたち、今や標準治療となっています。手術時間、出血、尿失禁、勃起不全の機能障害も従来の手術より少なくなりました。入院期間も1週間から10日です。

手術支援ロボット
ダ・ヴィンチ
放射線療法

前立腺に放射線を照射して、がんを死滅させる治療法です。手術同様、がんが前立腺内にとどまっている患者様が対象となります。放射線療法は手術療法と比べて身体的負担が少なく、高齢の方でも治療可能です。
体外から治療を行う「外部照射療法」と、前立腺組織内に放射線源を挿入する「組織内照射療法」があります。

重粒子線治療

2019年より前立腺がんに対してはじめて保険適応となった治療法です。
重粒子線はX線とは性質が異なり、体内に入ると放射線量が低いまま進み、ある一定の深さで止まります。停まる直前に放射線量がピークになり、その位置より先には進みません。このピークになる位置を調節し、前立腺の形に合わせた照射が可能になりました。あてたくない周囲の臓器を避けて、合併症を少なくすることができます。

ホルモン治療(アンドロゲン除去療法)

前立腺がんは男性ホルモン(アンドロゲン、テストステロン)に対する感受性がたかく、それを抑えることで進行を防ぐことができます。前立腺局所進行がん、転移のある前立腺がんに対して行われます。
内服薬と注射による治療が主体となります。治療開始後は多少の注射部位反応はありますが、それ以外では大きく日常生活の質を落とすことはなく継続可能です。
副作用としては、ほてり、発汗、性欲減退、勃起障害ED、女性化乳房、乳房痛、肝機能障害、貧血などがあります、長期的には、骨粗鬆症、肥満、糖尿病、心血管障害などのリスクも高くなり注意が必要になります。
治療経過としては、初期のホルモン治療でどれだけ長く進行を抑えられているかがカギになります。長期的には耐性ができ、前立腺がんが進行していくことがあります(去勢抵抗性といいます)。その場合は他のホルモン治療薬や、抗がん剤治療が必要になることもあります。
現在さまざまな新薬の開発がめまぐるしく、生存期間の有意な延長も期待できています。一方経済的には高額です。主治医との相談のうえ、個人個人に合った的確な治療選択が求められます。

しおざわクリニックでの取り組み

前立腺がんは、他のがんと同様に早期発見が重要です。50歳以上の男性は、1回はPSA検査をお受けになるようお勧めします。正常値(PSA<4ng/dl)でも、年齢による差もあります。問題なければ3-5年毎の検査をアドバイスすることもあります。1度は検診で今の状態を知ることが今後のためにも重要だと思います。
PSAが高値であった場合は、MRI、組織検査など地域連携病院と密接に関わっており、すぐに検査を組んでもらうことができます。診断確定後の相談は、患者様ひとりひとりにあった治療法を見つけられるように丁寧にサポートしていく姿勢を心がけております。

しおざわクリニックでの取り組み

前立腺がんは、他のがんと同様に早期発見が重要です。50歳以上の男性は、1回はPSA検査をお受けになるようお勧めします。正常値(PSA<4ng/dl)でも、年齢による差もあります。問題なければ3-5年毎の検査をアドバイスすることもあります。1度は検診で今の状態を知ることが今後のためにも重要だと思います。
PSAが高値であった場合は、MRI、組織検査など地域連携病院と密接に関わっており、すぐに検査を組んでもらうことができます。診断確定後の相談は、患者様ひとりひとにあった治療法を見つけられるように丁寧にサポートしていく姿勢を心がけております。

急性(細菌性)前立腺炎

尿道から侵入してきた細菌が、前立腺に感染することによって発症します。排尿後の熱感や痛み(排尿時痛)、残尿感、頻尿などの症状が起こります。尿は濁り、血尿が見られたり、尿道から膿が出たりもします。高熱や食欲不振などの全身症状を伴うこともあります。年齢に関係無く発症しますが、前立腺肥大症を合併していることも少なくありません。

急性(細菌性)前立腺炎の検査

尿中の細菌や白血球の有無を調べます。必要ならば、血液検査を行います。肛門から指を入れて、前立腺を触診(直腸診)すると、疼痛・熱感を伴う腫大した前立腺が触れます。

急性(細菌性)前立腺炎の治療

熱が高く、緊急を要する場合は、入院が必要になります。点滴を行い、細菌に有効な抗生剤を使用します。症状がそれほど重くない場合は、内服薬を用いながら、外来で治療することもあります。

慢性前立腺炎/慢性骨盤疼痛症候群(CP/CPPS)

下記のような症状があるのなら、慢性前立腺炎の可能性があります。

  • 排尿時や射精時に痛みや不快感を覚える。
  • 尿道や陰嚢と肛門の間(会陰部)に違和感や痛みがある。
  • 恥骨部ないし膀胱部から睾丸あたりかけての不快感がある。

慢性前立腺炎は、あまり一般に知られる病気ではありませんが、20~40代の若い世代に多く、症状は会陰部不快感・排尿障害・精液に血が混じるなど様々です。いずれの症状も強くはなく、何となく感じる程度のあいまいなものです。症状の増悪因子としては飲酒、過労、緊張、長い時間の座位姿勢、刺激物の多量摂取、骨盤底への慢性的な物理的刺激(プロドライバーや自転車通勤者)などが挙げられます。

慢性前立腺炎/慢性骨盤疼痛症候群の検査

超音波検査で前立腺の状態を確認し、尿の細菌培養で原因菌を特定します(菌は、いる場合といない場合があります)。前立腺をマッサージした後で尿を検査し、白血球の有無や数、細菌の有無などを検査することもあります。

慢性前立腺炎/慢性骨盤疼痛症候群の治療

治療法は、慢性前立腺炎のタイプによってそれぞれ異なりますが、治療は感受性に合った適切な抗菌剤と前立腺のむくみをとる薬による治療が中心になります。排尿障害の治療に用いられるα遮断薬が有効であるという報告もあります。症状が落ち着いたら、漢方薬を積極的に用います。この病気で留意すべきことは、症状が改善するまでに時間がかかる(数ヶ月単位)点です。根気よく、着実に治療を続けましょう。

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